見ましたよ、アテネ五輪の、シンクロ・ペア決勝。
正解と思ったよ、ロシアの金、日本の銀は。
某局のおやぢコメンテーターは「ロシアが勝ったのは、審判の先入観なんじゃないですか」なんて言ってたが、そんなこたねーって。こういうおやぢは、芸術点のある競技なんて、ふだん見たことないんだろう。シロートとはいえ、こんなおやぢよりは、私のほうがこのテの競技は見慣れてるもんね〜。
 
で、私の見た印象はというと。
アップテンポの音楽にぴたりと合わせてくる動きの速さで、お酒にほろ酔いしたような陶酔感を味あわせてくれたのは、フランス・チーム。以前は天才・デデューが好き勝手につっ走り、相方が必死でついてくるって感じだったのに、うまくなりましたねえ、相方が。
振付と、アイデアのよさで光ったのは、アメリカ・チームの『メデューサ』。うねうねしたふしぎな感覚はつぎの動きが読めず、ときどき2人がまるで双頭の生き物みたく見えて、眼がはなせなかった。
 
そして、ロシア・チーム。跳び込んでさいしょの脚上げでもう、勝負あった、と思った。きりりとした動き、貫禄。鏡に映したような、一糸みだれぬ同調性。いまにもぶつかりそうなほど接近した演技の、ハラハラする迫力(じっさい、いちどぶつかってた☆)。これぞシンクロの、醍醐味を感じた。
なによりロシア人は、どんなふうに脚を伸ばし、どんなふうに手指をそらせば美しく見えるか、知り尽くしてる。美意識が高い。そしてあの、ロシア人独特の手脚の長さ、関節のやわらかさ。判るもの、アメリカ・チームにもギリシア・チームにも、ロシア系の選手がいるわけが。
 
そして・・わが日本チームの『ジャパニーズ・ドール』は・・。
「日本人形の可愛さを表現」っていうけど、じつは私、日本人形ってすんなり「可愛い」と思えたことないのよね。「可愛い」と思うより先に、「こわさ」のほうが先にくる。
なまじ日本人で、日本人形ってものをじっさい知ってるからこそ、違和感あるのかな。いっそ何も知らない外国人なら、こんなもんか、とすなおに受け入れられるのか?
だいたい、動かないからこそ人形なのに、あの速い、はげしい動きの中で、静かな「日本人形」を表現するのって、無理があったんでは?
いちばん印象に残ってるのは、あの唐突な、ぶきみな笑い声。
ここで人形のこわさ、ぶきみさを感じさせようとしてるのか、してないのか。いずれにせよ演技より印象に残るのは、まずいだろう。
拍手をさいそくするような振付も、はっきり言って、いやだ。どうも日本チームの演技は「見て見て、上手でしょ、ねっ金メダルちょうだいちょうだい・・」って訴えすぎてて、陶酔できないんだ。だからロシア・チームみたいな、堂々たる貫禄が感じられない。これでうっかり金メダルとらなくて、よかったよ。
衣装だって、たまたまあれ作るドキュメンタリー見てたから「鶴の羽の柄」だって知ってたけど、そうでなかったらアレ、鶴の羽だって、見ただけで判るかぁ・・?
 
去年の世界水泳の、難解といわれた『風とバイオリン』の、優雅さ、せんさいさ、深さ、はんなりした叙情は、どこへ行った。あれをこそ、極めてほしかったのに。日本ならではの「美」ってのは、じつは、あそこにあったのに!
こういう日本チームのカンチガイ体質を、まず何とかしてほしい。
うかうかしてると、無欲で、のびのびしたアメリカあたりに、足元すくわれるぞ〜。