おほほ、借りてきましたわ『大脱走』ビデオ。ひとりしみじみ「ブロンソン追悼上映会」。
またの名を「マッカラム様・鑑賞会」ともいう(笑)
この映画でのブロンソンは、「穴掘り王」とか呼ばれてるくせして、暗い/せまいとこでパニクるという、妙な役どころ。「わ〜ん暗いよ〜せまいよ〜こわいよ〜!」と、ついツッコんでしまう・・(^m^)゛
 
映画の冒頭で、べつの場所に護送されるロシア人捕虜のむれにまざって、ブロンソンが逃げようとするシーンがあった。すると、コバーンもすばやくまざってきて「おれにもロシア語を教えろ」という。ここでブロンソンが、ただひとつ知ってるロシア語として教えるのが、
「ヤ ヴァス リュヴリュー」(=I Love You)だった。
 
あれ? 正しい語順は「ヤ リュヴリュー ヴァス」のはずだが? なんど聞いても、ブロンソンはこの語順で話してる。あまりロシア語は得意じゃないって設定なのか、それともこれは口語の、くずした形か? 発音もそうとう怪しかったが、「スパシーバ」(=ありがとう)は、なかなかきれいな発音だった。
※ちょっとだけロシア語をかじった結果、判ったこと。
ロシア語は強調することばを文末にもってくる規則があるので、「ヤ ヴァス リュヴリュー」でもまちがいではないそうです。つまり、「きみが好きだ」じゃなく、「好きだ! お前が・・」ぐらいの、ちょっとくだけた言い方になる、というかな。
 
ブロンソンをなだめ、さいしょからさいごまでずーっと行動をともにする相棒あり。ちょっとベタベタしすぎ、ねらいすぎじゃないのっ☆ と思いつつ、いよいよ脱走直前、ビビリまくりのブロンソンに向って、その相棒が「ワルシャワ陥落のとき、ドイツと戦うため、きみは英国へ飛んだ。・・な、もういちど、英国へ戻ろう」と励ましてるのに気づいた。
ああ、ポーランド人って設定だったのか?!
大脱走』は大好きな映画で、放映されるたび見て、日本語版のセリフはほぼ暗記してるくらい見てきたのに、これには、はじめて気づいた。
いやでも、ポーランドの映画監督ワイダの『地下水道』を連想する。地下水道を通って逃げまくるレジスタンスたち。暗い穴ぐらを恐れるポーランド人捕虜。なにかドラマがひそんでいそうだ。
 
スイスは、ちっこい山国で土地がやせてて、あまり占領してもうまみがない。(ポーランドみたく、まっ平らな国だと攻めこまれやすく、歴史をみるといろんな他国に占領されどおしだが)
スイスは、おかげで長く占領されることがなかった。だから、自治ができた。永世中立になれた。
また、高い、けわしい山脈は、逃げこむにふさわしい。かくれる場所が多く、逃げるほうも大変だけど、追手もたいへんだからね。
映画はちがうが『サウンド・オブ・ミュージック』でも、ドイツに占領されたオーストリアから、トラップ一家はスイス・アルプスに逃れてましたね。
 
大脱走』で、脱走捕虜たちはみな、まずはスイスをめざした。
マックインも「スイスへ」とつぶやきながらバイクとばしたが、国境の柵を越えられなかった。ヒコーキ盗んで空から逃げたG・ガーナーとD・プレザンスは、アルプス見えるあたりまでは行けたのに・・。
R・アッテンボローさんたちは、捕まったときフランス語しゃべってたけど、あれはどこだろう? スイスのフランス語圏の近くか、ドイツとフランスの国境あたりかな。
 
大脱走』は、ただ大物スターをずらずら並べただけの、穴掘り映画じゃない。たぶん原作も面白く、脚本と演出がていねいだから、ツッコミどころ満載。
ヒルツことマックインは、いかにもアメリカ人らしく、野球のグローブとボールを持ち歩いてる。よく見たら、左手薬指にゆびわしてるの発見。よくまあ、この男にカミサン(ないし婚約者)がいたもんだ?! ・・あ、いや、魅力ないっていう意味じゃないよ・・f(^ー^; だって、国に帰ればまだ学生で、お祭りのバイク・レースで賞金稼いで学費のタシにしてたって言ってたし。結婚なんかしてるヒマなさそうじゃん☆
D・プレザンスは、収容所にいてさえ「ミルクを入れてない紅茶は野蛮だよ」と優雅な手つきで20回も出したお茶をいれ、あくまで英国風。
コバーンは、オーストラリア人役。脱走するのに、でかいカバン持ってくので「家へのみやげにカンガルーでも持って帰るのか」と仲間にからかわれてた。“クロコダイル・ダンディ”風に「ハウ・ダーイ」なんて英語しゃべってたかも(英語くわしくないから、よく判んなかったが)。この人は逃げるとちゅう、運よくレジスタンスに出会い、導かれてぶじ、スペインへ逃れる。
小柄で「国に帰れば競馬の騎手」というアンガスは、スコットランド人。収容所暮しに疲れてノイローゼ寸前、そのくせ反抗的で独房入りさせられたり。アメリカ独立記念日の密造酒に酔っぱらってたのしげにフォークダンス踊ってたのに、あと少しで完成する脱走穴が看守にバレたと知ったとたん、ヤケおこして塀をのりこえようとして、射殺される。感情の起伏やたらはげしく、こういう人って本当にいそう・・と、ぐっとリアルになる。うまい脚本だ。
マジメで、ひとのいいドイツ人看守の「ボーイ・スカウトで、勲章を19コもらった。20コめをもらう前に、気づいたらヒトラー・ユーゲントに入れられてた」ってセリフも、せつないし。
 
よく考えると、ラストでマックインだけ独房入りする理由がイマイチ判んなかったりするが。独房の扉が閉まってすぐ、1人キャッチボールしてる音が聞こえてきて、マックインのすがたは映さず「負けねえ。またやってやる」気骨をみせる。このラスト・シーンしかないって気、するもんなあ♪
 
ついでに・・
マックインと、コバーンと、ブロンソンは『荒野の7人』『大脱走』両方に出てるけど、コバーンも、ブロンソンも、『荒野』で討死にした人は、脱走後ぶじ逃げのびる少数派になるのね。マックインだけは両方とも生き残るけど、『大脱走』では逃げおおせられず収容所へ逆もどり。なるほどなー。
なんとなく見流してても、『大脱走』はじゅうぶん面白い映画だが、見るたび、くめどもつきぬ発見ができる。セットとCGとアクションばかり派手な、さいきんの大作映画に欠けてんのは、こんな点。
 
おまけ・・新聞の追悼記事によると、第二次大戦中のブロンソンは空軍さんで、B29に乗って日本へ爆撃に来たそうです。ぜんぜんヒコーキ乗りらしく見えないけどなあ。
炭坑夫してた時期もあるそうな。どうりで穴掘りすがたがひときわ、サマになってた。
で、えーと・・合掌。 ←またかいf(^ー^;