こんな映画、タイトルに魅かれて見た、あたしが馬鹿だった・・☆
 
なんぢゃこりゃあぁ〜!!
 
と、思わず優作のヂ〜パン刑事してしまいました。
 
ぢつは私、最後まで“レニングラード”ってタイトルだとばっか思って見てたんだが、友人より「スターリングラード(現:ボルゴグラード)だよ」との指摘あり。
・・ははは〜f(^ー^; 無知をさらけ出してしまった・・いかにフマヂメに見てたかバレたな。(ゆいさん、ありがとう! ひとつおりこうになりました・・笑)
さすがにタイトルだけは直した。でも、以下の感想についてはまったく変える気ないぞ、私。(※ちなみにレニングラードって、現在のサンクト・ペテルブルグのことです)
 
オープニングだけは、素晴らしかった!
ロシアの冬の森、繊細なレース編のような裸樹の枝々。冷たい青一色の画面が、凄いほど美しい。それを背景に、霜のびっしりついた毛皮のオオカミの、真白い吐息。銃をかまえ「私は岩だ・・」と唱えつづける、主人公。
場面は一転、第二次大戦の時代へ。
スターリングラードにぞくぞく上陸してくるドイツ軍の、モブ・シーン。つっこんでくる爆撃機から見た、ナナメに見える地上への、機銃掃射。前進してはドイツ軍の圧倒的物量にやられ、退却しては臆病者として自軍にようしゃなく撃たれ、右往左往するロシア兵たち。迫力満点。あんまり戦争映画が好きじゃない私でさえ、ひっぱりこまれるような説得力。このへんまでは、文句なしにお見事なんだが・・。
 
主人公はどうやら、射撃の腕はそこそこらしいのに、味方を勇気づける宣伝のため、凄腕スナイパー(=狙撃手)として新聞に載りまくる。いわば、つくられた英雄。
この役のジュード・ロウが、気の毒だけどミス・キャストもいいとこ。
スナイパーの顔、スナイパーの眼、スナイパーの横顔を、もってない。悪いけど、眉と眼の離れた顔だちってのは、銃をかまえてもサマにならんよ。顔の造作のよしあしとは、また別の話。
そりゃ、スナイパーとしては一流とはいえず、むしろ腕より心に問題あり、情に流される人間的な男って役だとしてもだ。仮にもスナイパーとして通用するレベルではあったはず、ものには限度がある。
いくらなんでも、前夜に恋人と夜を共にして、そのせいで翌日、任務中に居眠りするなんて・・スナイパーとして以前に、男・失格、人間・失格。百ぺん死んでこい!! と思ったね☆ いや・・あの厳寒のロシアの戦場で、死体にまぎれてじりじり動きながらいねむりしたら、まぢ死ぬわな(笑)
なーにが“英雄ヴァシリ”よ、あんたなんかせいぜい“パシリ”よ。
こんな役を振られたジュード・ロウもかわいそうだと、心から思う。
 
ソ連のスナイパーと、ドイツのスナイパーの対決って図式は面白いのに、こういう設定に不可欠の、力のせめぎ合いがない。だいいち、スナイパーのくせして、2人ともちょろちょろ動き回りすぎる。人間が動かなきゃ映画にならんと思うなら、そもそも素材の選びかたがまちがってる。じぃーっと一ヶ所に動かずにいて、ワン・チャンスの一瞬を狙ってこそ、スナイパーでしょうが。
撮り方がヘタで、2人の位置関係よく判らず、緊張感なく、セットの外に風景が広がって見えない。
 
ドイツ側スナイパー役のエド・ハリスは一番よかったが、ナチス軍服が似合わん・・顔が善人すぎるのかも。悪役としてはアクの強さが足らず、スナイパーとしては、重厚さ、白熱した静けさが足らん。それでも主人公よりは、はるかに強そうだから、情ないな〜。
レクター博士”ことA・ホプキンスが楽しげに残酷に演じたらよかったかもしれんが、それじゃよけい主人公と差がつきすぎるか・・はーあ c=(-.-)
 
一番よくないのは、ねらいが中途ハンパなこと。
こういうタイプの映画見たがる、冒頭のドイツ軍上陸シーンに「ほぉーっ」と喜ぶような客は、ダラダラつづくラブ・シーンや、主人公の軟派ぶりにウンザリしてしまう。女が出てきただけで「あかん!」と口走って、席立つ奴だっている(私だ)。男しか出てこない『レッド・オクトーバー』とか『ワイルド・ギース』みたいな、ハードな映画を期待してたもの。
逆に、そういうラブ・シーンや、ジュード・ロウにうっとりしたい女性客だと、いたいけな子どもが二重スパイさせられたあげく首吊られる展開や(この子の名がサーシャという・・号泣)、ガレキだらけ、死体だらけの背景についてこられんだろう。
いったい、だれに見せたくて作ったんだ、この映画?
 
じつはドイツ軍のロシア侵攻のほんとうの勝者だったといわれる、ロシアの厳寒が描けてない。雪、霜、白い息さえ見せれば寒く見えるってもんじゃない。酷寒の中、じっとしてなきゃいけないからこそ、スナイパーはつらいはずなのに。寒気が伝わってきたのは、冒頭のオオカミ狩の場面だけだった。
ロシア人たちが歌い、バラライカを弾き、踊る場面に熱気がなく、いかにもおざなりで、ウソくさい。
つまり、この映画には、どっこにも“ロシア”が、ないんだ。部屋の壁には質素なイコン(宗教画)、ガレキにはキリル文字の落書き、大道具さんは義務をはたしてたのに・・うわべだけ、形だけ。たぶん、作り手に“ロシアへの強烈な愛着”が、ないんだ。
だってこの程度なら、欧州の歴史ある都市で、激戦地でありさえすれば、どこでも話が成り立つもの。どうしてもスターリングラードである必要、全然なし。
少しぐらい作りが下手でも、おれはこれがロシアだと思う、おれの愛してるロシアだと思う、って熱い思い入れがあれば、まだ許せるのに。ロシアを愛してもないなら、ちょっとでもロシアを描けたらって自負も気概もないなら、ロシア舞台の映画なんか作るな!!
 『ドクトル・ジバゴ』でも見て、ちったぁ勉強しなおしてこい。
突出しだけすごく美味で、あとは救いがたいほどまずいコース料理みたいだ・・ぶつぶつ。
一言で言うと「冒頭の数分は拾いモノ。そこからあとは“つまんないゴルゴ13”」でした。おわり。