アテネ五輪・シンクロ団体フリーの話のつづき。
アメリカ・チーム『魔法使いの弟子』は、魔法でまきおこす嵐、巨鳥、巨大な蜘蛛・・なんてイメージがじつに判りやすく美しく、さすがショウビズの本場。ディズニー『ファンタジア』の、可愛いミッキーマウスのまほう使い、思い出すなあ♪
スペイン・チーム、「民族の誇り」は、むしろ日本チームより強く感じた。水着の正面にダリの顔をアップでプリント、髪どめと、水着のおしりに目玉のデザイン。ずらりと並ぶと、かなり壮観。 プールサイドでは全員の腕で目玉の形。ダリの肉声入りの曲にあわせた、奇天烈(きてれつ)な動きの演技。めいっぱい楽しんでる演出がほほえましい。後半ちょっと振付が単調だったのが惜しいが。解説によると後半のテーマは「柔らかい時計」だったらしいが、そうは見えんかったぞ・・。
イタリア・チームは悪くなかったけど、曲の変わりめのつなぎがギコチなくて、曲いろいろ使いすぎ盛りこみすぎ、と思わされた。しかも、ヴェルディ『レクイエム/怒りの日』にベートーベン『第九』合唱かょ・・『エヴァンゲリオン』思い出すなあ(笑)
 
話かわって。いよいよ真打登場、ロシア・チーム。
・・と思ったら、いきなり音楽が止まるアクシデント発生。再放送ではカットされてたけど、Liveでは15分ぐらい中断してたと思う。いったんプールに跳び込んだあとだけに「どんどん体が冷えてしまう。選手たちがかわいそうです」って日本の解説者が言うほど、長かった。いったん「順番変更して、中国の演技を先にして、そのあと・・」って申し入れもあったようだが、「いますぐやります!」と選手たち。
そんな中断をものともしない、みごとすぎる演技。もう、なにからなにまで、別次元。
大胆な手描きふう花柄に、透ける生地、あやうく下品になりそうな衣装。
サンバと、タンゴをつなぎ、複雑きわまりないリズム変化。ひとつまちがえたら空中分解しそうに微妙なバランスの曲調。
曲のつなぎの自然さも素晴しかったが、そのむずかしいリズム変化にぴたり合わせてくる動きの正確さ、切れ味。もう、見てるだけでひたすら生理的快感・・。 中盤で曲のテンポがゆるやかになると、ごく自然な流れで動きがやわらかになるのには、まいった。
ひたすら曲に乗ることだけをめざし、テーマにベタな演技じゃなく、終始「美しい抽象」に徹したロシアの演技。勝敗つきぬけて、しみじみシンクロ好きでよかった〜と痛感。
 
ロシア・チームは、その場にいるどの国とも、闘っていなかった。
しいていうなら、舞台芸術なら随一の自分の国の歴史と、おなじく舞台芸術の歴史ではひけをとらないギリシアの観客の審美眼と、闘ってた。
(北と南に遠く離れた国だが、じつはロシア正教東方正教ギリシア正教だったりして、この2つの国にはけっこう共通点が多い。このへんそのうち、ツッコンで調べてみよう・・)
だからねえ、日本チーム、もう「打倒ロシア!」とか息苦しいこというの、やめません?
ロシアと日本の差もだいぶ開いてるけど、日本と、他のチームの差も、そうとう開いてるよ。これが日本チームの悲劇だと思う。
だから、スペイン・チームのダリみたいに、めいっぱい遊びの空間を作ってみたら。
たとえば「写楽」あたりをテーマに、日本文化を、正しく自分の国の観客に向けて発信してみたら。写楽のあの、大胆な大首絵がプリントされた水着がずらりと並んだとこなんて、想像しただけで楽しいじゃないかぇ♪ シンクロ好きの1人として、勝ち負けでなく、そういう「楽しい演技」を日本チームに、心から期待する。シンクロ好きでよかった、そして日本人でよかったと・・しみじみ、そう思わせてもらいたいてえもんだね、あたしゃ。