トリノのフィギュアスケート、辛口の感想。

トリノEX・・正直、がっかりした。
いつも趣向をこらしてくるスルツカヤの、あのおざなりなEX、何ごと!? 金メダル獲ったら、もっとすごいEX用意してたのかな・・と思ったら、泣きたくなった。
可愛いカウガール姿で鞭を振り回して踊った、ソルトレイクでの溌剌としたスルツカヤは、もういない。
 
照明も、よくなかった。
せっかくスピン名人のバトルくんが、おしげもなく高度なスピン見せてんのに、いきなり照明おとした。黒の衣装で滑ってんのに、暗い照明にしちゃ、何やってんのか見えないじゃん! しまいに、真剣に見てるのが阿呆らしくなってきた。
 
村主さんの『キダム』で、やっと気が晴れた。
あれは何度も見てるが、何度見ても、素晴しい!!
途中、音楽が変るとこで、音に見事に動きがついてく、上等なお酒に酔うような快感!
あれこそが、振付。あれこそが、フィギュアスケート
ジャンプが不安定でも、充分に楽しめた。
 
曲、衣装、振付、そして、選手の表現力。
私の知ってるフィギュアスケートは、そのすべてが一体になった、総合芸術のはずなのに・・
 
ソルトレイク・ペアでの、審判買収、八百長騒ぎ。
芸術点という、あいまいな要素がよくないと、要素すべてを難易度で分けた。たしかに、主観の入る余地はない。公平にはなったが・・
 
振付らしい振付がなくなってしまった、トリノでの、男女シングル。
あれじゃ、どの曲で滑っても、同じじゃないか!?
 
まるで体操競技でも見るような、高難度の技の争い。
高度な技術は、たしかに素晴しい。
だけど、技術の高さだけじゃ、感心はしても、感動はできない。
 
私はあんな、点取り競争の競技に惚れたおぼえは、ないぞ!
技術と芸術性をあわせ持ち、別格の存在だったヤグディン1人がいなくなると、こんなふうになっちゃうのかと、ほとんど絶望を感じた。
 
さすがにアイスダンスには、うなるほど見事な振付の妙があった。
(ややリフトに頼りすぎてる感じの演技もあったが・・)
いままではシングル中心に見てきたけど、これからはアイスダンスと、アイス・ショー中心に見てようか。振付を楽しみたいなら、それしかないかも。そう思った瞬間があった。
 
(たまたまトリノの時期に放送してたアイス・ショーで、ソルトレイク八百長騒ぎにまきこまれた、ベレズナヤ&シハルリゼ、サレ&ペレティエ、どちらも呆然とするほど素晴しい振付を競ってたので、ますますそんな気分になった・・)
 
それを思いとどまらせてるのは、日本の男子に、
表現力のかたまりのような、織田くんの存在があるから。
 
スウェーデンの選手(名前忘れた。失敬)のSP、
鳴りまくる電話にかこまれて悲鳴をあげる、というプログラム。
解説者「日本人は、なかなかこんなオーバーな表現できませんね」
そんなことない、織田くんなら、もっと上手に演じる! と思った。
 
イヴァン・ディネフのSP『タイプライター』も、
織田くんなら、もっと素敵に滑れる、と思った。
軽快なタイプライターの音に乗り、小気味よく滑る織田くんが見たい。
 
織田くんがいるから、もうしばらく、フィギュアスケートについていく。
逆にいえば、織田くんまでが高難度だけ意識した演技するようになったら、もう今のフィギュアスケートには、私はついてけない。・・
なんだかトリノ見てる間じゅう、織田くんのことばかり考えていた。
 
もっと言いたいことは山ほどあるが、これ以上は言えない。
選手それぞれが、なにを背負ってるか、どんな思いで技を完成させてったか、知ってるから・・。