助手が、ナタリーじゃダメなわけ-(2)

一言でいうと、モンクさんの中での、バランスの問題。
 
モンクさんにとって、亡き妻トルーディ以上の女性は、ありえない。
気だてのいい、めんどうみのいい、とびきりの金髪美女。
しかしそれゆえ、モンクさんは結婚してからも
「本当にぼくなんかでいいの?」と、心のどこかで思ってたはず。
もっとふさわしい男が本当はいるんじゃないか? と。
トルーディのような女性の場合、カンペキすぎて配偶者を安心させられないのが、唯一の欠点なわけです。
 
そんな彼女が、夫の車にエンジンかけようとして爆死した。夫の身代わりに・・
(余談だが、『アンタッチャブル』のアイルランド人警官マローンの妻の死因も、まったく同じケース。米国じゃよくある犯罪なのか?)
 
モンクさんは思ったはず。「やっぱりぼくなんかじゃない方がよかったんだ! ぼくと一緒にならなければ、あんな死に方せずにすんだのに!」と。
たんに妻の急死ってだけじゃない、長年の心の重荷なんだが、モンクさん本人は、まだそれにあまり気づいてないように見える。
 
トルーディ以上の女は存在しない。それは大前提。
だけど、トルーディとまったく正反対のタイプで、まったくちがう“女の魅力”をふりまく女性が、モンクさんの前にあらわれた。
それが、シャローナ。
曲線美、くりくり巻毛、口うるさいけど面倒見がよくて、大きく開けた胸元にいつもイニシャル「S」のペンダントして、きれいな脚にミニスカートがよく似合って。
元気で、生命力にあふれ、男の子1人かかえたシングルマザー。
 
シャローナが、いかにも「可愛い!」って気持をこめて、若いディッシャーくんをからかうのも、ほほえましかった。
小・中学生ぐらいの勝気な女の子が、気になる可愛い男の子をからかうような口調で。
たとえば、ディッシャーくんが、上京したママとの食事の約束がキャンセルになったとき、
「誰かさんたら、ママにまでふられてる〜♪」なんて感じ。
 
お姉さんと
「このバッグはあたしが先に買ったのよ! 真似しないでよ!」
「いいえ、あたしが先よ!」
なんて口ゲンカしたり。
生々しい女らしさを、戯画化して笑いで見せられる、コメディエンヌだった。
(その3.につづく)