『ヒトラー〜最後の12日間〜』拾いモンだ、これ!

先日、AXNのフライデーナイトプレミアムで放送された
ヒトラー〜最後の12日間〜』(2004.独)
 
内容は、タイトルそのまんま。
ヒトラーの秘書だった女性の、回想形式の物語。
ざんごうの中で子どもたちが合唱したり、
ちょっと女性の視点が入るあたりが
いやでも暗い物語の雰囲気を、少しやわらげる。
 
特に印象的だったシーン。
ゲッペルスの妻・マグダが、
6人いる自分の子どもたちに睡眠薬を飲ませ
(最年長の13歳の娘だけは、不吉な予感がして
飲むのを嫌がるのが悲惨・・)
眠りこんだ子ども1人々々に、毒薬のカプセルをかませ、
顔にふとんをかけておおってやる。にゅっと足が出る。
これを6人分、ひたすら淡々と、えんえん撮りつづける。
 
すべての子をわが手にかけたマグダは、
寝室を出たとたん、無表情のまま、すとんと床にすわりこむ。
やがて、ふらっと立ちあがり、テーブルの前にすわり
無表情のまま、黙々とトランプの1人占い・・
 
じれったいほど省略のない、一定のゆるやかなテンポ。
米国のハリウッド風映画文法に慣れた眼に、新鮮。
残酷な場面の特撮シーンも、ハリウッド風より
ちょっとずつ短く、それが切れ味と気品を生む。
 
湿度の高そうなフランスやイタリアと違って、
ドイツって何か、陽なたのホコリくささみたいな
独特の乾いたふんいきがあるのが好ましい。
 
なにより、ドイツ映画なんで、全編ドイツ語。
独特の早口の巻き舌が、えも言われぬ臨場感!
 
ヒトラー役の役者さん、そっくりだー!
まあ演技は、ヒステリックに怒鳴ればほぼ似るんだろうが。
笑った顔とか、やつれて凄みを増した顔になると
ヒトラー本人というより、手塚治虫アドルフに告ぐ』の
ヒトラーそっくり! 手塚さんて、凄い・・
 
ちなみに、ヒトラーは毒薬のカプセル噛み、
効くまでの一瞬に銃で頭を撃って自決してた。
ぜったいに失敗しないための、二重の方法か。
こんなの知らなかった・・堅実なドイツ人らしいが。
 
なにより、影の主役(ていうか、実はこれが主役?)
ナチス制服のあらゆるパターンが、ふんだんに出てくる!
親衛隊あり。ヒトラーユーゲントあり。
もちろん、匂いたつ優雅な野蛮さの極致、革コート姿も!
 
オーラスは、ロシア軍の侵攻場面なので
ロシア軍の軍服まで拝める!
野外で羊?の丸焼き作りつつ
輪になって歌い、踊るロシア兵たち・・
 
内容の悲惨さに涙しつつ、しっかり見惚れてる自分がいた。
軍服ってのは、どうしてこう、美しいのだ〜!
とくにナチスと、ロシアの軍服って、史上最高!
戦争賛美とはまったく別の次元で
それは1つの真実と思うのよ〜。
 
戦場シーンは迫力あるのに、どこか静かな印象。
変にナチスを悪役に仕立てず、
ありのままを見せる、大人向けの映画。
2時間半と長いけど、興味ある方はどうぞ!
(どーも最近、派手な特撮モノより、
こういう地味で質のいい作品が好きだな・・)