田村高廣の追悼も、ぜひ書いときたい。

追悼文ばっか書いてんのがしんどくて、か〜なり出遅れたが、
この人のも、ぜひ書いときたい。
 
田村 高廣(たむら・たかひろ/本名)
2006年5/14、脳梗塞で倒れ、目黒区の病院で5/16、0:17逝去。享年77歳。
本人の「葬儀のあとに死亡を公表するように」という意志により、通夜・告別式とも身内・関係者のみ列席、静かに故人を偲んだ。その後、喪主の長男・潔さんにより、死亡が公表された。
 
父親は、伝説的な名役者“バンツマ”こと阪東妻三郎
弟の正和・亮とともに「田村3兄弟」として有名。
(もう1人、兄弟がいるが、この人はマネジャーだそうな)

 
BSの追悼番組『泥の河』・・見ました。
あたしゃ隅田川べりの下町育ちだもんで、子どもの時分、じっさい“水上生活者”てのを、近所の橋の上からよく見たもんですよ。
船のへりにフトン干したり、植木鉢ならべて水やったりしてました。
あの船ん中をいちど見てみたい・・と思ってたもんで、主人公の子どもが水上生活者の子と仲よくなり、船に入ってくシーンで、思わずドキドキ・・。
後半、やや平板になっちゃうのが惜しいが、無骨なほど丁寧に作った、いい映画。見終えたとき、思いっきり泣いたあとのような、なんともいえない余韻があって。
 
田村高廣さんは、満州帰りで体に傷跡かかえ、夫婦で小さな定食屋やってる男の役。ダボシャツにステテコはいて、おちょこを使った手品を子どもたちに見せる。こんな格好してても、いい男っぷりは底光りしますな〜。女房は彼にベタ惚れ。
本人が「これが代表作」と言ってた気持、判る。ハマり役だもの。
めちゃ上手い子役が3人もそろってんのに“喰われなかった”のって、すごいと思う。
 
高廣さん、兄弟の中でいちばん父親・バンツマに顔だちが似てるもんで、どうしても見てるとイメージ重ねちゃうんだけど。(きゅ〜っと眼じりの下がる笑顔なんか、ソックリだもの!)
また、ある時期から、父親の当たり役に、あえて挑戦してたし。
 
高廣さん主演の『狐のくれた赤ん坊』も見たことある。
川の渡し場人足が、赤ん坊を拾う。それがじつは殿様の落し胤(だね)・・って話。
その子の手習いが上手に書けたってんで「どうでぇ?」と見せびらかすとき、自分は字が読めないもんで、上下さかさに見せてしまう。
こういうあたり、高廣さんは少し説得力に欠けた。大学出、って教養の気配がしちゃうんですね。
親父さんのバンツマなら、もっとリアルに演じたはず、と思った。
(バンツマの『無法松』の車引きや、『おやじ太鼓』回想シーンの人夫の役は、いかにもって感じでしたから・・)
 
(その2.につづく)